＞＞日々通信 第125号 2004年12月13日＜＜ 一覧 ホーム 前へ 次へ
1934年12月13日、日本軍は中国の首都南京を攻略した。
蘆溝橋で一発の銃声をきっかけに戦争に突入して5ヶ月だった。
いまのように、戦車やトラックなどによる戦争ではない。
徒歩の歩兵による小銃や機関銃による戦争だ。大変な戦争だった。
日本軍はぼろぼろになって南京にたどり着き、やっとのことで攻略した。
そして、市民に紛れた敗残兵や市民の抵抗に会い、歴史に残る大虐殺をおこなった
いま、南京にはこの時の犠牲者を記念する南京大虐殺記念館がある。
(この記念館については http://www.han.org/a/half-moon/index.html 写真いりで
紹介している。)
私も10年あまり前に訪れた。
記念館といっても、広い庭園に、広島の記念公園のように、さまざまな地区の犠牲者
名が刻まれた思い思いの記念碑が建てられている。
その中に記念館はある。
圧倒されるのは頭蓋骨の山だ。
これは、満州事変のときの平頂山の虐殺記念館と同じだ。
その犠牲者数はさまざまに言われているが、大量の犠牲者があり、いまもその家族や
知人・友人、近隣の人々がいて、その死を痛み、その霊を慰めようとしているのだ。
南京虐殺と重ね合わせて、私はバグダッド陥落の日を思い、ファルージャの虐殺を思
う。
バグダッドの虐殺について、Baghdad Burningの記事が胸をうった。
http://www.geocities.jp/riverbendblog/
テレビ（朝日ニュースター）で綿井健陽の「バグダッド 父と子の物語」を見た。
綿井さんが自分で撮影したものから編集したのだという。
バグダッド陥落の日からはじまる。
破壊されたバグダッド
「何時ごろ空爆があったのですか。」という問にイラク人が
「お前には答えない。」
「お前らとブッシュは組んでいる。」
「一緒にイラクを破壊しているんだ。
「君らが多くのイラク人を殺している。」と言う。
戦車が映される。女が「臆病者」と叫ぶ。
「大きな戦車にかくれる臆病者」「病院に行って子どもたちを見ろ」
と叫ぶ。
女が米兵に「何しに来た」と言う。
「イラク人を解放するためだ」と米兵が答える。
困惑した若い米兵の姿も映し出される。
フセインの像が倒される場面。
イラク人は駆り集められたのかも知れない。
盛り上がる活気がなかった。
バグダッド陥落 4月9日
翌日の病院
傷ついた人々
死亡した子どもの青ざめた蝋人形のような顔
「もう二人も死んだんだ。」と男が言う。
シャッハドは5歳だった。
ライス ７才
ザイナブ 3才
妹も死んだ 兄さんも死んだ
俺たちを殺して何になるんだ
血 ハエ ウジ
2003年4月16日 ソマル地区 バグダッド北西部
3人の女の子の父はアリ・サクバン 31才
こことここに弾丸が当たったんだと彼は説明に熱中する。
シャハドのとび出した脳を押し込んで繃帯した。
もう一人の子あこの瓦礫の下に
アベン・アルハイセム眼科病院
バグダッド市内
眼の中にクライスター爆弾の小さな破片がはいった女の子。
2回目の手術が必要だ
ハディール・カデム 12才
不安な表情
父 カデム・モハセン 41才
3人の娘の墓
3人の殉教者と書かれている。
シャッハド ライス ザイナブ
毎日ここへ来るんだ
お父さん泣かないで。私たちは天国の鳥になりました。
私の苦しみがわかるのか
デモが通る。民主政府をつくれ。
カデム・モハセン
「もっとやれ、もっとやれ」と叫ぶ。
「アメリカは何もしてくれないぞ 何もしないぞ」
一人残った子ども
イランの戦争で兄も死んだ。次の兄も死んだ 。叔父も死んだ。
4人の家族を失った
今度は3人の子どもを失った。
ユニセフのバッグ
一人残った子どもは学校に行く。
子どもたち
この鉄条網がアメリカの民主主義だ。
1丁の銃がある。
目の前にアメリカ兵がいればこの銃で撃ちまくるんだ。
撃ちつくすまで撃って倒れるアメリカ兵が見たい。
まだ一発も使っていない
巡視する米兵の装甲車。
「ちくしょう、あいつらはいつも来やがる」
「これがイラク人を解放することか。」
作者は一言も語らない。
映像と映された人物の言葉だけ。
断片の集積。
しかし、それだけに深い感動がある。
報道の意味。映像の意味。
芸術の問題としても、考えさせられる作品だった。
南京虐大虐殺記念館のページで、日本人はいつまで謝罪しなければならないのかと書
かれていたが、私はちがうと思う。
はっきり、この戦争を憎むという立場に立ち、中国人民とともに、この戦争をはじめ
たものどもを憎み、いま、企てられている戦争に反対する立場を表明すれば、謝罪す
る必要はない。
何度謝罪しても、彼らを赦し、彼らを祭った靖国に参拝する小泉を赦しているなら、
同じことだ。
＜日本人＞とは何か。
この戦争に反対した日本人の立場に立つなら、謝罪する必要はないのだ。
日本帝国主義は、日中人民の共同の敵だという言葉の意味が、いま、はっきり、わかった。
靖国参拝をつづける小泉は、日中人民の共同の敵だ。
小泉は靖国参拝をつづけて中国を屈伏させるつもりだろうが、それは、日本を破滅さ
せるだけだ。
日本の経済力を誇って驕りたかぶったその鼻っ柱をへし折ってやれ。
やがて、中国は日本を追い抜く。
日本だけが世界ではない。
米中貿易もあり、ＥＵとの貿易もある。
中国も韓国も日本だけを頼りにしているわけではないのだ。
この愚かな総理大臣を赦していては、日本の未来はない。
愚かなことをくりかえしていれば、日本は世界から置いていかれる。
南京虐殺の日に日本の戦争を思い、アメリカの戦争を思う。
南京虐殺をの事実をしっかりと見つめるのは自虐行為ではない。
それは日本の戦争を撃ち、そのことによってアメリカの戦争を撃つのだ。
過去の日本をひたすら美化して何になる。
それは、過去の行為をくりかえすぞと世界に宣言することではないか。
過去の日本にも、あの戦争に反対して、投獄され、拷問され、虐殺され、獄死させら
れた人々がたくさんいるのだ。
その人々の側に私は立つ。
私はあの戦争を否定し、この戦争を否定する。
私はあの戦争だけを否定するのではない。
私はアメリカの原爆を赦さない。
都市焦土攻撃を赦さない。
そして、南京虐殺を赦さないのだ。
これが、日本人の立場ではないのか。
いま、歴史の大きな転換点に立っている。
私たちがアメリカの戦争を憎み、そして、この戦争に反対するアメリカの人民に期待
するように、日米人民の握手をつよく求めるように、中国、韓国、北朝鮮の人民は、
あの戦争に反対し、この戦争、これからの戦争に反対する日本人民に期待し、強い握
手を求めている。
日本とアメリカの人民の友好と団結に栄光あれ。
日本とアジアの人民の友好と団結に栄光あれ。
いま、私は未来に絶望してはいない。
世界人民の友好と団結が、きっと新しい歴史を開くだろう。
目の前の事実と、長い歴史の光で照らす事実。
かつて、非国民、国賊と罵られた多喜二とその仲間たちは、戦後、解放の英雄である
かのように見られたが、いま、また、彼らを、非国民、国賊と罵る者たちが現れて来
た。彼らはそのように罵れば、私たちがひるむかと思っている。彼らは、背後に日本
とアメリカの権力があることを自覚しているから、それに依拠して、強そうなことを
言っているのだ。もし、君らが民族の未来を憂えるのなら、反米、反小泉の旗を上げ
よ。親米、親大資本の右翼は蛆虫右翼、パラサイト右翼だ。
君たちは三島由紀夫の「奔馬」を読んだか。
冬の夜は長い。
今年の冬はやはり異常高温らしい。
京都議定書に反対して、アメリカのだれかが、この高温でよろこんでいる者もいると
言っていた。
歴史はどこへ行くか。ついに世界人民は目覚めるだろうが、その時、すでに、手遅れ
ということのないようにしたい。
いや、もう、すでに手遅れなのかも知れないが、その破滅をすこしでも延ばしたい。
破滅を見つめることは悲観主義ではない。
破滅を自覚することで、今日の日を意味ある一日にしたい。
それが、確実に死を迎える人間の生き方ではないか。
今日を行き、明日を生き、明後日を生きよう。
戦争に反対するたたかいの戦列の末端にあって、今日を生きたことは私の喜びだった。
皆さん、それぞれに喜びのある明日を迎えられるように。
何といっても冬なのだから、身体に気をつけてお過ごしください。
伊豆利彦 http://homepage2.nifty.com/tizu/
新掲示板１から
114. 韓国漱石研究会のこと 伊豆利彦 2004/12/13 (月) 10:25
韓国漱石研究会では、「漱石における＜過去＞ 三部作を中心に」というテーマで話
した。
一度、出席したいとおもってはいたが、今年の大会に出席できるとは思っていなかっ
た。
急な話で、準備は何もできず、出席者には申し訳なかった。
この頃、私は漱石における＜過去＞の問題について考えていたので、それほど深い考
えもなくこのテーマで話すことに決めたのだが、いよいよ韓国に来てみると、このテ
ーマの重ささが感じられた。
いうまでもなく、日本と韓国のあいだには、重い過去がある。
私のテーマは漱石における＜過去＞と＜昔＞であった。
＜過去＞は現在との連続に比重がかかり、＜昔＞は現在と対比された過去の意味につ
かわれるののではないかと思う。
日本が韓国を支配・統治していた36年はもう昔の話になったのだろうか。いまもなお
忘れることの出来ない過去なのだろうか。
日本とアジアの関係を考えるとき、この＜過去＞と＜昔＞の問題は避けて通ることの
出来ない問題であるように思われる。
慶州の社会文学会と韓国国際言語文学会の合同大会でも思ったことだが、参加してい
る研究者が若いことである。
若い研究者がすぐれた研究成果を積極的に発表している。
すこし前までは、両国間の過去について、はげしく日本を論難する意見が支配的だっ
た。夏目漱石についても、その帝国主義的意識の攻撃に集中して、漱石そのものを研
究するという姿勢は乏しかったように思う。
しかし、いまは、漱石や日本文学の問題を、いまの自分たちにも通じるところのある
ものとして読もうとする傾向が強まっているのではないだろうか。
これは中国の若い研究者にも見られる傾向だった。
来年早々に刊行される予定の多喜二論で、私は多喜二を現代の目で読む、世界の目で
読む意味について考えたが、漱石についても同様のことが必要なのだろう。
新掲示板２について
いまの問題点が主としてなるほどさんから指摘されています。
なるほどさんがどんな方かは存じあげないが感謝しています。
できれば、もっと多数の方から投稿をいただければと思うのですが。