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　　　日々通信　いまを生きる　第16号　2001年12月13日　　伊豆利彦
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寒さがきびしくなりました。お元気ですか。
アフガンの事態は第二段階にはいったように思われます。
そして、中東問題が深刻化し、アメリカはイスラエルのＰＬＯ自治政府に対する攻撃を容認して
いるように見える。
私の予測を超えて、事態は拡大して行くように思われる。

正義と人道、民主主義を守るために、国外に必要以上の軍事力を投入して、大量のアフガン難民
をつくり出し、その強さを誇示するアメリカは、国内では民主主義の諸原則を無視し、人権を蹂
躙する捜査が進み、民間でも愛国主義をあおられて、さまざまな事件が発生しているようだ。

書くべきことが多いのに、私はすこし忙しすぎて、頭が散漫になり、通信が遅れている。
本格的な通信は、いましばらく出せないので、そのお詫びを言うために、中途半端な本号を送り
ます。

病気の方は、薬がきいてマーカーが下がっている。
心配してくださる方もあるので、そのことをお知らせするのも、本号を発信する理由の一つです。

次にＳさんからのメールを紹介します。

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本日の通信を受け伊豆先生の気力にかげりが窺え、なんだか気になってしまいました（はずれて
いればいいと思っていますが）。

9.11からはや3ヶ月が過ぎようとしています。この3ヶ月を振り返って、いま自分たちはとんでも
ないところに立っているナと思っています。

先日19の息子が「おれも自衛隊に徴兵されるのかな」と不安げに質問してきました。「お前たち
の世代はたぶん大丈夫だよ、でもお前たちの息子の時代はどうなるか分からないな」というよう
な会話になりました。

これが9.11以前なら恐らくは、冗談にもならなかったと思います。<テロ>とそれに対する<報復
戦争>という図式が一端成立してしまえば、平穏な日々を打ち砕くのは「白い粉」ばかりか、
「ｏ−157」でも、「エイズ」でも、「狂牛病」でもなんでもいいわけです。

それが実際に敵のものでもなくて、老朽化した原発の事故をテロリストのせいにしても、三鷹、
下山事件のような謀略でもいいわけです。ただ、最初の一撃さえあれば、それである日突然世界
戦争が始まるのです。こんな時代です。

これはある日核戦争が始まると考えるよりも確率はたかいわけです。暦の上では21世紀ー新世紀
となったけれど、実は世紀末の始まりであるともいえるとおもいます。

●この時代を変える力は、ささやかにみえる先生のメルマガかも知れません。先生のメルマガが
届くたびに時流に流されそうになる自分の心を立て直すことができるような気がするのです。本
当の言葉を、本当の知性をと訴えられているような気がします。――それが、時に心に重くとも
………。

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◆◇Ｓさんへの返事
励ましのお言葉ありがとうございました。
12月8日には仙台で「漱石と啄木」の話をしました。
「時事放談」などというようなものも地域の会でやりました。
いろいろ考える事、書いておきたいことがあるのですが、原稿の仕事も、思いがけずたてこんで、
「日々通信」も中途半端になり、ご心配をおかけしたと思います。
ちょっと忙しすぎ、体調を害したこともあって、ご心配をおかけしましたが、決して、気力がお
とろえたということはないと思っています。
いまの多忙を乗り切れば、あとは、元気を回復すると思っています。
ありがとうございました

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時代は暗いが、しかし、それは一つの時代が終る末期の苦悩だと思う。
この時代を乗りこえる思想こそ、新しい思想なのだろう。
その思想を近代日本の歴史のかげに生きつづけた思想をさぐり、この現実の中で再生させるこ
とによって、それらを受継ぎ、新しい時代に生きるものに発展させたい。
私にとって、現代は暗いばかりではない。
むしろ、心おどらせられる時代、希望にみちた時代でもある。
希望などはすべて虚妄なのだ。絶望との戦いによってのみ、希望はつくられる。
漱石とともに啄木のこと、そして、とりわけ、魯迅のことが思われる。
かれらは、いずれも死にいたる病におかされながら、暗い時代、絶望的な時代と真正面から対
峙しながら、未来へのメッセージを書きつづりつづけた。

私は戦争の時代を生きた自分の青春をふくめ、いまの時代に生れあわせたことに、感謝してい
る。

年末でお忙しいことでしょう。
寒さきびしき折から、体に気をつけてお過ごしください。

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