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　＞＞日々通信　いまを生きる　　第106号　2004年6月29日＜＜

　イラクの主権移譲がこっそりと前倒しで行われた。イラク国民に知らされることもなく、他のどの国からの祝福を受けることもなしに。なんともわびしい話だ。

　そして、日本軍は多国籍軍の一員に自動的に編入された。
　これも、日本国民の了承を得ることなく、首相が独断でブッシュ大統領に約束し、内閣が勝手に決めた決定に基づくとされるが、その移行の時期は6月30日になっていたのをあわててて書き換えたということだ。
　アメリカは数少ない同盟国の日本にも内証で、こっそりことを運んだのだ。

　なんとみじめな新国家の出発だろう。
　これが世界最強を誇る超大国のすることかとあきれてしまう。
　イラク全土に拡大する反米武装勢力をおそれてのことだという。
　しかし、こんな逃げ隠れするような政権移譲で、新イラクはどんな未来をイラク国民にもたらすことができるだろう。

　日本が国際連盟を脱退してでっち上げた傀儡満洲国の発足だって、こんなにみじめなものではなかった。
　しかし、あの時から、日本は後戻りできない破滅の道を歩いたのだった。

　武装勢力の攻撃を避けるための前倒しだというが、こんな子供だましで、これからますます反政府のスローガンで結集する武装勢力の攻撃をかわすことができると思っているのだろうか。

　なんとみみっちい小刀細工であろう。新政府とアメリカの未来はすでにもう明瞭だ。
　そんなアメリカの数少ない同盟国として、破滅の道行をともにする日本の未来はあわれなものだ。

　同盟国の危機なのだから、それを見捨てることはできないというのが、情に篤い任侠の義人コイズミさんの真情であろう。決してご主人の意に逆らえない忠犬の美談であるわけではないだろう。

　韓国人が人質になり、殺害された。韓国では撤兵を求め、増派に反対して、おおきな運動がおこっている。
　日本でも、何人か殺されれば、撤兵を求める運動が盛り上がるのだろうか。
　　
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　韓国の中央日報に河野洋平衆議院議長のインタービューが掲載されていた。
　河野氏は憲法改正について、「国民の生活に不便、不自由な点があれば憲法を変えるべきだが、今はそうでない」として、反対の意向を示した。（［新掲示板２]365）

　この指摘は重要だと思う。いまの憲法改正の動きは、国民生活の必要から出ているのではなくて、アメリカの意向に沿って、アメリカの言いなりに、日本の軍隊をアメリカの戦争に参加させようとするものであると思われてならない。

　アメリカの意向に背いたら日本は破滅するというのが固定観念になっていて、自由に考えることができない人が、いまの日本ではあまりに多いように思われる。
　戦後60年近く、ひたすらアメリカのに依存してきた結果、自立の気概も、自信も失ってしまったのであるらしい。

　彼らはアメリカを全面的に信頼しているわけではない。アメリカの悪口もさかんに口にする。しかし、アメリカに見放され、見捨てられたら生きていけないと思っているのだ。なんとも情けない奴隷根性だ。

　たしかに、この60年、日本はひたすら米国に依存して、その「繁栄」を実現した。そのことが、日本人の奴隷根性を肥大させ、日本国民の魂を腐敗させた。

　かつて、単独講和に反対して、日本の独立と民主主義のために、国民的な大きな運動がおこったとき、そのスローガンは植民地化反対だった。

　いま半世紀たって、日本の植民地化とはどういうものだったかがよくわかる。
　冷戦の時代に、日本はアメリカに従属し、忠実な同盟国として、アメリカの武器工場になり、補給基地、生産工場となって、戦後復興を実現し、高度経済成長を達成した。
　日本は世界でも有数の富める国になった。そのために、自国が植民地化され、属国化されていることを知らず、ひたすらアメリカを讃美する若者をつくり出してしまった。
　自国の独立を売り渡し、ひたすら他国に従属して繁栄を実現した国の国民は、精神の自立をうしない、魂の腐敗をまぬがれ難い。
　
　いま、軍事力を強化し、他国と戦争するようになれば、民族の独立が実現するように思っている人がいるが、強い国の尻尾について、弱い国を脅したり、攻撃したりするのでは、ますます、その強国への従属と奴隷根性を強めるばかりだ。

　アメリカは朝鮮戦争の時も、ヴェトナム戦争の時も、日本の軍隊を強化し、憲法を改正して、米軍に協力することを求めたのだが、日本は憲法を盾にして、この要求を拒みつづけた。

　しかし、最近は、この憲法の盾を投げ捨て、アメリカの言いなりに、弱小国相手の戦争に出かけていこうとしている。
　これは、日本が独立を強めた結果であろうか。それとも、対米従属をいっそう強めた結果であろうか。

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　憲法改正と関係があるのだろうが、今年になって日の丸君が代問題が加熱している。

［掲示板２]から

[1552] 日の丸君が代問題 投稿者：伊豆利彦 投稿日：2004/06/12(Sat) 08:52:17

いま、都立高校の卒業式での日の丸君が代が問題になっている。

私が1950年に大学を卒業して浦和西高校に就職したとき、なんのはずみだったか、当時の校長が、昔、中学の教師をしていたとき、「天皇陛下」という言葉が出ると、新しく入学してきた1年生が突如として不動の姿勢（気をつけ）をするようになったという話をした。その時は2年以上の生徒や、教師たちはこれを異常なこととして笑っていたが、翌年は2年生までがそうするようになり、やがては、全校生徒がそうするようになり、教師も笑うどころか、自分たちがゲートルを巻いて授業をしなければならなくなった。

あの校長はなぜ、こんな話を新任の私たちにしたのかわからない。
1950年はいうまでもなく、朝鮮戦争がはじまった年で、アメリカが日本の再軍備を強く求め、警察予備隊が発足するなど、自衛隊創設への道を歩きはじめた年だった。
そのような時代のなかで、校長も、昔のことを思い出したのかも知れない。

［新掲示板２]

295．今度の選挙

名前：伊豆利彦 日付：6月22日(火) 9時17分
孫がまだ幼いころ、友だちと喧嘩するとき、相手に何というのかと聞いたら、＜嘘つき＞と言うと言った。

＜嘘つき＞というのがどういうことかはわからぬままに、その言葉が相手に打撃をあたえると思っているようだった。

しかし、いまの大人たち、特に、政治家とか、実業家とかは、＜嘘つき＞と言われても平気らしいい。
むしろ、その世界では＜嘘つき＞だけが成功するようにさえ見える。

しかし、そんな時代がいつまでつづくのだろう。
たしかに、いま、一つの時代がおわろうとしている。

一つの時代の終わりを思わせる出来事が次々に起る。

政治のことは言わない。
凶悪犯罪の増加、犯罪の低年齢化、出生率の低下、長期にわたる不況、貧富の差の拡大、ホームレスの増加、等々、数え上げればきりがない。

掲示板１にも書いたが、芥川はそんな時代に＜漠然たる不安＞を語って自殺した。

啄木が「時代閉塞の現状」を書いたのもこんな時代だった。

自民党は戦後60年近くもほとんど政権を握りつづけて、こうした事態に全面的に責任を負う立場にありながら、鼻唄まじりで国民の追及をかわし、なおも政権を維持しつづけようとしている。

それを可能にするのは、どんなことがあっても自民党を支持しつづけてきた国民の支持があるからだろう。
国民の支持というが、それは本当か。
このように低投票率で、自民党がかちつづけるというのは、棄権者の役割が大きいのではないか。

しかし、＜猛きものもついに滅びぬ＞というときが必ずくるのだ。
それは何時か。
どれほどの犠牲を代償としてそれは可能となるのか。

今度の選挙は、それに一歩でも近づくものになるのだろうか。
目の前の勝敗にこだわるよりは、日本の未来を展望し、新しい日本の可能性に一歩でも近づくことが大切なのではないか。

かつて、政権交代を唯一の目的として細川護煕さんの新生党が政権を握ったことがあったが、それの末路は何だったか。

いまは、二大政党だの、政権交代だのといって、マスコミでは民主党の勝利に期待している向きが多いようだが、はたして、どれほどの代わりばえがするのか。

政権につくことだけを目的にする政権亡者はもうたくさんだ。
大きな展望に立って、その確実な一歩となる選挙を、私は望む。
今度、「日々通信」105号に、選挙について書いた。

私は今度は、憲法を守り、戦争に反対する共産党・社会党に、いろいろ問題はあっても投票することが必要ではないかというのが、私の考えだ。

完全なものなどどこにもない。
○×式の思考によれば、自民も駄目、公明も民主も駄目、共産・社会も駄目、結局、支持政党なしで、棄権ということになるのだろう。

こうして、自民が勝ちつづけることになるのではないか。

私たちは批評家になるのではなくて、日本の未来を展望して、いまの状況でその一歩をどう進むかを現実的にえらぶ必要があると思う。

反対の方も多いだろう。
当然だ。
いろいろな意見が活発に交錯する必要がある。

ただ、棄権だけが、自己に忠実な選択だという考えは、結局、自己を放棄し、現状を存続させることになるのではないかということは言っておきたい。
反論を期待している。
http://homepage2.nifty.com/tizu/tusin/tu@105.htm

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363．先行する憲法の根本改正としての教育基本法改正

名前：伊豆利彦 日付：6月28日(月) 19時42分
法学館憲法研究所　★★【今週のひとこと】
2004年6月28日
西原博史さん（早稲田大学教授）

●狙いは国家と個人の関係の組み替え
　憲法改正提案の本質は、９条改正にはありません。むしろ、もっと大きなことを考えて憲法を変えようとしている人々がいるのです。そこで根本的に変革されようとしているのは、国家と個人の関係です。もっとはっきり言えば、国民個人を主体とした国家のあり方が最終的に放棄されようとしているのです。
　もっとも、「国民個人を主体とした国家のあり方」という言葉すら、今の段階で、かなり空虚に響くことは否めないでしょう。すでに国民個人は、国家権力の主体というよりは、権力の客体としての位置にあるようにも考えられます。そこにあるのも、一種の「憲法と現実の乖離」かもしれません。だから、憲法を改めて現実に近づけ、その現実をもっと先に進められるようにする、という提案が出てくるのでしょう。その場合に、「先」というのは、どういう国家のあり方を指すのでしょうか。

全文
http://www.jicl.jp/hitokoto/index.html
http://www.jicl.jp/hitokoto/backnumber.html

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364．Re: 先行する憲法の根本改正としての教育基本法改正
名前：伊豆利彦 日付：6月28日(月) 19時50分

いま、あらためて、第1次大戦がはじまって間もなくの漱石の講演「私の個人主義」のことを考える。

当時の日本は＜民主主義国家＞ではなかった。
いまの日本は＜民主主義国家＞だということになっている。

しかし、はたしてそうか。
そして、憲法改正は、いまの反民主主義的傾向をさらに強めるのだ。
http://www.jicl.jp/hitokoto/backnumber.html

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今年の梅雨は晴の日が多く、過ごしやすいが、しかし、これも地球温暖化による天候異変かも知れないと思うと喜んでばかりはいられない。
6月23日は沖縄戦終結の日、6月25日は朝鮮戦争開始の日であった。
これらについて書きたいと思っていたが、果たせなかった。

伊豆利彦のホームページ　http://homepage2.nifty.com/tizu/