三･一五記念集会 小林多喜二と『一九二八年三月十五日』 1993年3月15日 トップ 前へ ホーム 次へ
小林多喜二は1903年(明治36)10月13日 秋田の貧農の子として その死は1933年2月20日 29年４カ月の生涯でした。
没後60年を記念する多喜二祭 2月20日 予想を上回る多くの参加者がありました｡
山田今次さんの｢2月20日 小林のお母さんへ｣ と言う壺井繁二の詩の朗読､清村杜夫さんのアコーディオン演奏 木津竹嶺ファミリーの民謡があり､後藤陽吉さんの三浦綾子の『母』の最後の部分の朗読がありました｡私も多喜二の文学について話しましたが､私の話は別として､いずれも感 銘深いものでした｡特に『母』の朗読は､多喜二のお母さんが殺された多喜二の無残な遺体に対面する場面で、改めて深い感動に会場の全体が包まれたのでした。
3月12日にも多喜二を記念する集会 私は29年前のビキニの被災を記念し核兵器と核実験の廃絶を求める国際会議に参加していて出席出来ませんでしたが､大きな成果を上げたと思います｡
今日もまた････
多喜二の時代 あらゆるまともな集会が 警察の弾圧
[その時代に自由だった人々もある｡その人々は今よりもはるかに自由だったのである｡]
自由とは権力者の自由ではなくて､人民の自由である｡
多喜二の手紙 タキ宛1927年3月15日 --------------------------------------------------------------------
下手な読み方で恐縮ではありますが、その一部を読むことから私の話を始めたいと思います。
[Ａ] 多喜二のやさしさ
愛の深さ タキへの愛 年譜 レジメ
田口タキへの手紙
｢修身とサウシャリズム｣
｢《下女》と《循環小数》｣
彼はそのやさしさ故に殺されなければならなかった｡
極悪非道の凶悪犯人 国賊でなければならなかった｡
真実の隠蔽 削除 発禁 検挙投獄 拷問 虐殺
あくまで真実が隠蔽され 虚構の報道
山本代議士 秋田政府委員
私たちは読むことが出来なかった｡ 戦後になって
マスコミ 言語 文学の戦い 言論の自由 集会の自由
今 私たちがこうして集まることが出来る
戦前の日本共産党が要求していた 平和と民主主義 男女平等 8時間労働等の今日ではごく当たり前の事 当たり前が当たり前でない
しかし､今 なお 多喜二を知らぬ人たち 若者 治安維持法
戦った人たち 民族の歴史 日本人
決して
戦争が始まれば 民主主義は蹂躙される 国民生活
[Ｂ] 治安維持法
小林多喜二は､65年前の今日､治安維持法による大弾圧で検挙され､言語に絶する拷問を受けた同志たちの戦いを描いた『一九二八年三月十五日』によってプロレタリア文学の代表的な作家になり､5年後の1933年2月20日､自分自身が警察の拷問で､逮捕後わずか数時間で殺されました｡
特高政治の犠牲者 (治安維持法犠牲者)
明らかな虐殺死 80人
拷問･虐待が原因で獄死 114人
病気その他の理由による獄死 1,503人
逮捕後の送検者数 75,681人
未送検者数 数十万人
治安維持法の公布 1925年4月
昭和天皇が大正天皇の摂政に就任していた時期
◆1921(大正10)11･25 摂政に就任
◆1922･7･15 日本共産党結成 1923･6･5 第1次共産党事件 堺利彦ら検挙
◆1923･9･1 関東大震災 東京などに戒厳令 朝鮮人虐殺 社会主義者の虐殺
12･27 帝国議会開院式に出席途中､虎ノ門跡付近で難波大助に狙撃されたが無事 (虎ノ門事件)
◆1924･1･5 二重橋爆弾事件(朝鮮独立運動｢義烈団｣ 爆弾 不発 逮捕)
◆ 1･20 中国､第1次国共合作成立
1925・1・20 日ソ基本条約調印 日ソ国交樹立
4・22 治安維持法公布
5・5 普通選挙法公布 25才以上の男子
震災後 ◆大杉栄 伊藤野枝◆平沢敬七 川合義虎の虐殺 社会主義者の大弾圧◆朝鮮人の虐殺
自ら作り出した凶暴性 弾圧法
国体変革 私有財産制度否認 結社 加入 10年以下の懲役又は禁固
目的の事項の実行に関し協議したもの 7年以下 扇動したもの7年以下
1928年6月26日 改正 緊急勅令 3･15事件を契機に
国体変革を目的として [国体一本 天皇の絶対 ]
死刑又は無期若しくは5年以上
情を知りて加入したもの 又は 目的遂行のためにする行為を為したるもの 2年以上
自ら作り出した凶悪な陰謀団
マスコミ 民衆の問題
プロレタリア文学と天皇制
◆佐多稲子 三・一五事件の影響 未組織の労働者
『女店員とストライキ』
杉善書店の労働者 ストライキ 店員側の勝利 店員側と主人側の間 歴然と白けた気分 対立がはっきりした
ひと月ばかり過ぎた頃 中心人物が首になる
最初の争議が解決してから２箇月ほどの間に１０人ばかりの者が次々に止めさせられて行った。
《店員側にとって最も悪かったのは、その時突発した某重大事件であった。店主は凱歌あげた。
そしてうち側には隠し切れぬどん欲を包んでいる以前のあの威厳に復ろうと焦っているのだった。けれども店員たちの方では、店を追われた十人の者に引きずられていた小さな店員たちまでも、今度こそ自分自身に資本家の正体を判然と見たのだった。一人の小店員が脚気になり、養生費の交渉に行くと店主は、すでに二ケ月前に契約がしてあるにも拘わらず「玄米食ってりゃ脚気になんかならないよ。お前たちが勝手に白米にしたんだろう」 とうそぶいた。》
「共産党検挙さえなけりゃ、私たちまた争議やったのよ」
「そうね。共産党のことさえなけりゃね」
《彼女たちは確かに争議を再び始めたいのであった。しかし共産党のこ′と′のために それがやれないのであった。その点では少なくとも政府は、僅か１５歳の少女に過ぎない みち代や数江たちにまで、共産党のこ′と′があったということが非常に不利益である ことを教えこんだのであった。》
[三・一五事件の直後 山東出兵 張作林爆殺事件 ]
壷井繁治
｢踏みつけられる麦｣ 『戦旗』1929年1月号 1928年11月25日執筆
友枝 補修科の裁縫教師 22才
共産党事件の記事解禁 兄幸一の噂 学校など止めてしまいたいと思う
「ほんまに兄やんがあんなことさえせなんだら、こんな肩身の狭い思いもせんのに、極道奴が･････定二じゃって、お前じゃって、村のお陰でこうして立派にやって行けよんのに、あい奴がそんな事あ考えもせんと･････お母さんもこの年になって、我子にこんな苦労をかけられるとは思わなんだ。もう死んだ方がましじゃ。」
「兄やんはもう死んだもんじゃ思うて、うちら三人で兄やんやこい当てにせんと暮らさんかいの。ほれにどこかで云よったで、兄やんのようなことをしたら、もうこの村へは帰らさんのじゃ云うて。ほんまにどうしてそんな気んなったんじゃろうにのう。これからうちらが気いつけて、定二と二人で真面目にやったらまたうちの信用も取り返せるわいの。 」
◆◆婦人修養会だとか､思想善導会だとか､後藤静香の希望社の支部だとか云うのが新しく出来て､学校に勤めてる関係上､三日にあげずいろんな会合に引っ張り出されるのであった｡
◆どの講師も千遍一律の調子で、日本の国体の有り難さを説き、やれ共産党はならず者の寄り集まりであるとか、この頃は下々の者がずるくなり、外来思想にかぶれて社会主義者などになって、金持ちばかりいじめるとか、此村からは実になげかわしい、憎んでも余りある人物を出したのだから、皆さんは心を一つにして、ひたすら修養にはげみ、この不名誉を雪ぐような立派な人間にならねばならないとか、そう云ったようなことをくだくだと並べ立てては、その後で「希望」だとか「向上」だとか「愛の泉」などと云うパンフレットの押し売りをするのが常であった。
村長の山野
この村も最近開けてきたのは村のために結構なことであるが､一方､都会の悪い風習が流れ込んで来て､やれカフエーだとか､玉突きだとか 渡り者 危険人物 そう云う連中の扇動にのらないように用心しなければならないとか､この村から再び幸一のよう な人間を出さないようにするのは村民の義務であるとか､こう云った調子であった｡
定二が退校になる 就職もない
××村正義会 辞職勧告 国賊とも云うべき大悪人の妹として､苟くも一村の子女の教育者 たることを遠慮して貰いたい
母 ｢無理に憎まれいでもえいがいや｡長いもんにゃ巻かれろと云うこともあるし､このま まじゃ義理が立たんせになあ｣
無産者新聞 記事 起訴者の中に兄の名 定二 兄さんは皆が云うようなことをしたんじゃないらしい
｢そんならどうして監獄へ入るんぞいや｣
思想善導大売り出し 思想善導講演会 時間を励行した者に手拭一本
地域の労働者 幸一の手紙
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
[Ａ]何故多喜二は殺されなければならなかったか｡
不況､恐慌､戦争に対する人民の戦い｡
多喜二はその先頭に立って戦った｡
文学は戦いの武器であった｡
｢沼尻村｣ ｢党生活者｣ ｢地区の人々｣
指導的な評論活動
私たちは戦後になるまで多喜二の戦いを知らなかった｡
伏せ字 削除 発禁 検挙 拷問 投獄 虐殺
[Ｂ][その諸作品は]
働く人々の生活の現実に密着して､国家と資本主義､資本主義と戦争の密接な結びつき､天皇制の虚構性を暴露した｡
[多喜二は常に]同時代の先端的な問題
反軍反帝国主義戦争 過酷な搾取 支配の絶対化 反対者の排除 共産党 共産主義者
国賊ー不忠者ー侵略ー国の為ー戦争ー天皇
経済危機と戦争 対外侵略 対内抑圧
『蟹工船』 帝国主義 海軍 国民の信頼 『工場』 『オルグ』
｢工場細胞｣
三・一五以後の運動の転換 Ｈ・Ｓ製缶工場 Ｙのフォード 産業の合理化 近代化 大企業
職工たちの誇り 階層 国民一般の愛国心とソヴェート・ロシアに対する敵愾心
《お前らなんか殺したっていいんだ｡》 国賊 非国民
｢オルグ｣
誰も何時かの新聞にデカデカと人相のあまりよくない男の写真でしか｢共産党｣のことは知らなかった｡労働者の食いもの
◆源さん ｢三･一五｣の連中の轍を踏んでくれるな｣ 大衆
｢沼尻村｣ ｢党生活者｣ ｢地区の人々｣
満州事変 工場の戦時体制 戦争による国民生活破壊の 現実 国家社会主義の台頭 社会民主主義者の戦争協力 国民に対する欺瞞
[Ｃ]弾圧に抗して戦う日本共産党を前面に押し出し､もっとも人間的なものとして描いた｡
父母､弟妹に対する深い愛情 暗い現実を直視し､虐げられた人々に対する愛と献身
今日から見れば極めて当たり前で正当な人間的な主張
人間的であればあるほど弾圧されなければならなかった｡
国民の目から隠されなければならなかった｡
『オルグ』
軍需品製造の指定工場 共産党の弾圧と首切り 人員整理
◇帝国主義戦争準備の 産業合理化絶対反対!
◇ 帝国主義戦争絶対反対!
『沼尻村』
◆要吉 没落地主の子 社会ファシスト
◇吉井先生 子供の作文 全農 沼尻支部
◆支部長山館 一町歩ほどの自作
◆兼一郎 東京で全協日本金属 『党郁秋別炭山 戦争後 青年団 在郷軍人と結んで
労働者と農民 要吉 中農の立場 対立的
[青年訓練所 青年団 在郷軍人と結んで] 国家総動員 祖国防衛
☆兼一郎から見ると 労働者と農民結び付き
満洲ば取らなかったら
慰問袋 吉井先生 慰問どころではない 校長 日本国民たるもの
神田 郁秋別炭山 石山 市街地の精米所 禁足命令 [日雇で生活をたてている]《一家がこ んなに乞食みたいな生活をしてもいい｢み国のため｣なんてある筈がない》 ｢今は時期が時 期で､日本の軍隊が極寒の満洲で苦戦をしている時・・・｣ 校長 名誉なことだ 神田の父 踊って笑っていた父親 急に泣き出す
百姓らは戦争が来ればいいと思っているがそれは本当か 景気がよくなるというが､実際はよくなったか
『党生活者』 僚友会 慰問袋 軍事景気
『地区の人々』 軍人争議
[Ｄ]治安維持法と日本の文学 治安維持法と戦争 共産主義者
[Ｅ]多喜二は鋼鉄の文学者であったか｡
現実が人間を発展させる〈頭からでなく胸から〉 初期の短篇｢雪の夜｣ 『蟹工船』
〈頭からでなく胸から〉現実が人間を発展させる 『蟹工船』
〈理屈じゃないんだ､事実なんだ〉
初期の短篇 〈下女と循環小数〉〈世界意識という神聖な病気〉
｢雪の夜｣
「さて新しい年が来た。俺達の時代が来た。我等何を為すべきかではなしに、如何になすべきかの時代だ」と小林多喜二が日記に書いたのは、一九二八年一月一日のことだった。
[心臓 『一九二八年三月十五日』] [佐多幸子 子供の眼 視点
[Ｆ]『一九二八年三月十五日』の問題
警察の不法な弾圧 苛酷な拷問の事実 人権の無視 多様な労働者 巡査の過重労働
［家族の問題から始まる］
竜吉の妻と工藤の妻 子供幸子 佐多と母 心臓]
「お前、そのう、主義者シギシャだか、なんだかになったんでないだろうねえ」 仏壇の前にすわって泣いているのも何度も見た。特別の事情で育てられてきた佐多には」
《そういう母親を見ることは心臓に鶴嘴を打ち込まれる気がした。》
《ピーン、陶器の割れるその音を、彼はたしかにきいた。彼は、アッと、内にこもった叫び声をあげて、かけ寄ると、急いで幸子の懐をあけてみた。乾葡萄をつけたような二つの乳房の間に、陶器の皿のような心がついている─見ると、髪の毛のようなひびが、そこに入っているではないか》
★お恵 組合のひとに対する気持ち はじめはおじけづいたが､だんだん好意をもち始めた｡
◆ゼネラル･ストライキ ｢恐ろしい噂｣ 誰にとって恐ろしいかと言われても腹からその理屈が分かりかねた｡
◆幸子もいる､本当のところ､あんまり飛んでもない事をしてもらいたくなかった｡ ワザワザ食 えなくなるようにする事でるとしか思えなく､女らしい不服起きてくることもあった｡
◆然し､ 組合の人達の色々な話や労働者の悲惨な生活を知り､････夫たちのしていることが､そ れが
小市民と労働者
[Ｇ] ｢東倶知安行｣
朝鮮人 最初の普選 はじめての演説 政治参加の人間的意味 プチブルの意 識 老人 三代がかりの運動
魯迅 同志小林の死を聞いて
日本と支那との大衆はもとより兄弟である｡資産階級は大衆をだまして其の血で界をゑがいた｡又ゑがきつつある｡
併し無産階級と其の先駆達は血でそれを洗って居る｡
同志小林の死はその実証の一つだ｡
我々は知って居る､我々は忘れない｡
我々は堅く同志小林の血路に沿って前進し､握手するのだ｡
(『プロレタリア文学』1933年4､5月合併号)