カリックスウラの詩           一覧　ホーム

　　＊クライモラ
夕日染めたる火雲の如くに山より下る。其声風の吼ゆるが如く、＊カリルの竪琴鳴らすが如し。磨き上げたる刃金の具足に光を帯びて吾郎（きみ）来る。其眉開かず愁の影あり。フヒンガルの一門恙（つつが〕なきや否。知らず如何なる憂あつてか、郎が心の底に潜む。


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　　コンナル
　恙なくして生ける人々。光り眩ゆき長河の如く、只一筋に猟より帰る。盾日に翳して丘を下れば燃え立つ焔の山の脊と見ゆ。血気のともがら罵り騒いで戦既に近（ちかづ）けり。わが一門の武威を試めすと、阿修羅のダアゴオ皆寄せ来つて、弓矢の族（やから）、手創きづ誇る家党（いへのこ）を挑む。

　　クライモラ
　薄黒き霧の如く見えき其帆、濁る巨浪空拍つ際に。徐ろに漕ぎ寄する陸の方、兵（つは）ものゝ影夥し。

　　コンナル
　取り出でよなが父の盾、リンヴァ（ワに濁点）ルのかたみの盾、鋲打ちし真金の盾。黒ずみて大空渡る真丸の月の盾。

　　クライモラ
　君が為に取卸す其盾、昔し吾父を殺しぬ。亡き父のゴオマアの穂先にた斃れしや其時。斃れもやせん君も其盾の上。

　　コンナル
　はかり難き此命。われ死なばわが為に墓（おくつき）つくれ。石ならべ土盛りて後の世に吾名弔へ。泣きはらしたる目、墳〔はか〕にあてゝ、深き嘆きに浮上る胸打て。春日の如くあでやかに、春風よりも長閑なる汝を棄つとも、吾行かん。つくれ吾塚。

　　クライモラ
　去らば．行かん我も．其戟とりて、其太刀佩（は）きて、輝く武器といふもの持ちて。コンナルと共に行く我、戦ふ野辺にダアゴオと見（まみ）えん。アアドヴェ（ヱに濁点）ンの山に負（そむ）いて、山に仔む鹿に負いて、山に鳴る水に負いて、吾等行くなり。吾等行きてまた還らず。吾等が慕は遥か彼方。（オシアン）