「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書について訴える （案）
来年度から小中学校で使用する教科書をきめる大事な時が迫ってきました。特に「歴
史」と「公民」の教科書には大きな問題があります。
「新しい歴史教科書をつくる会」（以下「つくる会」と略記する）の「新しい歴史教
科書」は、神話と歴史をまぜこぜに記述して、天皇を美化し、日本の歴史と文化の優越
性を誇示するために、史実を無視し、歪曲し、さらにはあきらかに事実に反する記述ま
でしています。特に近現代では、侵略の事実に目をおおい、日本は被害者で、戦争の原
因は相手にあり、日本の戦争は自衛の戦争であったと身勝手な正当化をしています。さ
らに、「大東亜戦争」の呼称をもちい、「大東亜共栄圏」の思想を強調して、この戦争
をアジアの解放戦争であり、アジア諸国民の独立に貢献したと述べています。このよう
な教科書を検定に合格させた日本政府の責任は重大です。
侵略の犠牲者だった韓国や中国が検定結果に強く抗議するのは当然のことです。私た
ちも国際的な常識からかけはなれたこの教科書が採択され、子どもたちが侵略の事実を
知らずに、自国に都合のいいことばかりを主張する身勝手な国民になり、世界の諸国民
から軽蔑されることをおそれ、このような検定結果に強く抗議します。
「つくる会」がつくった「新しい公民教科書」は「歴史教科書」と表裏の関係にあり、
戦前の憲法をもちあげ、戦後の憲法については改定の動きに注目させています。天皇の
役割りと「公」の立場を強調して、「個」の権利の制限を説き、戦後の民主主義を批判
的にあつかう「公民教科書」は、「教育勅語」の全文を麗々しく掲げ、日本の戦争を正
当化する「歴史教科書」とともに日本をどこへ導こうとするのでしょうか。
これらの教科書は市販本として、「歴史」は五十万部、「公民」は十五万部発行され
たといいます。元来、採択の公正を期するために、見本本は一万部に限るという文部省
の通達があり、教科書を出版する各社はこれを守っているのに、「つくる会」だけはこれ
を無視して、大量の市販本を売り出し、世間に話題をふりまいて、採択を有利にしよう
としているのです。
これまで教科書の採択には、各学校の教師の意見をまとめた学校票によって、教師の
意見を反映させて来たのですが、今回からはこれが廃止され、現場の意見が反映されに
くくなりました。これも君が代・日の丸の強制など、ますます強化される「復古」的、
強権的な傾向のあらわれですが、「つくる会」はこのような動向と結びつき、さまざまな
運動を組織的に展開しています。
「つくる会」の教科書は、歴史学者でもなければ、現場の教師でもない人たちが中心に
なり、特別な目的のために、あわただしく計画し、あわただしく「つく」ったものです。
間違いだらけの杜撰なもので、検定で「歴史」は百三十七箇所、「公民」は九十九箇所
の修正を求められたほどす。修正もいい加減で、本来なら到底合格するはずのないもの
であり、検定後も多数のあやまりが指摘されています。重大な史実のあやまりを外国か
ら指摘され、その一部は「自発的」に訂正せざるを得なかったのはあわれなことです。
いま、日本が大きな転換点にあることは誰しもが痛切に感じています。世論の力でこ
のような教科書が採択されないようにするために、県民の皆さんに事態の重大性、緊急
性を訴える次第です。
次へ 戻る ホームへ